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自筆証書遺言と公正証書遺言の違い

  • 文責:弁護士 石井浩一
  • 最終更新日:2025年9月1日

1 遺言の種類

遺言を残す場合、その方式として、普通遺言方式、及び特別遺言方式とがあり、普通遺言方式には自筆証書遺言、公正証書遺言及び秘密証書遺言があります。

これらの方式の中でも多く用いられているのが、自筆証書遺言と公正証書遺言です。

それでは、この二つの「どちらの方式」で遺言を残そうかと迷った場合、どういう違いに気を付けて選べばよいのでしょうか。

2 手間、費用のかからないのは?

公正証書遺言は、事前の準備をして、かつ公証役場にいらっしゃる公証人の先生と相談をした上で作成することが多いです。

また遺言が完成した際は、公証役場に対して、一定の費用を払わなければなりません。

特に相続対象財産の価値が大きい場合は、それなりの高額の費用を払わねばなりません。

一方、自筆証書遺言は、法律上の形式制限があるのみで、誰とも相談する必要もなく、費用もかけず、自分の考えだけで完成させることができます。

ただ公正証書遺言は、公証人による認証を受けているので、改めて裁判所で検認をする必要はありません。

一方自筆証書遺言は、例えば不動産の相続登記申請をするのに自筆証書遺言を使用する場合、裁判所での検認手続きが必要になります。

特に相続対象財産(不動産など)の価値が大きい場合、財産を相続する相続人にとって手間、費用がかからないのはどちらかを考えて選択、作成すると、相続人からは感謝されるかもしれません。

残された相続人のために、検認が不要で手間のかからない公正証書遺言を選択することも、一手として浮かぶと思います。

一方、「この不動産は高額なのだから、誰に渡すか、この後、自分の気が変わるかもしれない。そんなとき、いちいち公証人の先生のところに行って遺言書作るのも手間がかかって面倒だな。」という理由で、本当の遺言者意思を反映するため、作成自体に手間のかからない自筆証書遺言を選択するのも一つの手です。

3 紛失、破棄のリスクが高いのは?

仮に遺言書を作成しても、紛失により、相続人や関係者の目に触れなければ、そのまま埋もれてしまう可能性があります。

被相続人の遺品整理の際、自動車教習所で使用していた交通教本の中から、二つ折りにして挟まれた自筆証書遺言がたまたま発見されたということもあったそうです。

また遺言書が誰かに発見されたとしても、破棄されてしまう可能性も否定できません。

自筆証書遺言の場合、紛失したり、破棄されたりしてしまいますと、使用できなくなりますので、遺言者が再度作り直す必要があります。

また遺言者逝去後に紛失したり、破棄されたりしますと、取り返しのつかないことになります。

生前の紛失、破棄対策としては、遺言者自身による厳重な保管のほか、法務局による自筆証書遺言書保管制度があります。

ただ法務省で指定された方式での遺言書を作成して、法務局に提出する必要がありますので、1で指摘した、作成における手間のかからなさという点で一歩後退します。

一方公正証書遺言の場合、原本自体が公証役場で厳重に保管されますので、紛失、破棄のリスクは限りなく小さいです。

公正証書作成時、遺言者は、この公正証書原本を基にした「正本」と「謄本」を受け取るのですが、万が一、これらを紛失したとしても、「謄本」の再発行は可能です。

以上から、公正証書遺言の方が、一般的に紛失、破棄のリスクは低いと言えます。

ただ、公正証書遺言を作成する手間や費用はかけられないものの、それでいて紛失、破棄リスクを抑えなければならないと遺言者が考えた場合、法務局による自筆証書遺言書保管制度を利用することが現実味を増すと思います。

4 後日の遺言無効リスクが高いのは?

遺言の内容が、相続人自身の意向に合わない場合、または相続人が、遺言者からは生前、遺言の内容とは全く別の話を聞いていた場合、その相続人は、訴訟などで、その遺言を無効として争うことが想定できます。

公正証書遺言は、公証人が、公証役場という公の場所で、法律で決まったプロセスで作成されることから、遺言作成プロセスの段階で無効とされる余地はほとんどないと言われています。

ただし公正証書遺言作成時に、遺言者本人の意思能力に問題ありとされるケースも少なからずありますので、公正証書遺言といえども、無効とされるリスクはゼロではありません。

一方自筆証書遺言の場合、その作成自体の手間や費用が掛からず、遺言者の意思のままに作成できる反面、公正証書遺言と異なり、人を入れずに作成するケースが多く、その遺言作成プロセスが第三者に明らかにならないのが通常であります。

そのため、この遺言、本当に遺言者が作成したのかという遺言無効主張の余地があると言えます。

遺言者の意思によるものかどうかは、筆跡が遺言者のものかどうかで争われることが多いですが、当然、遺言者の意思能力も争われることもあります。

以上、自筆証書遺言の方が、作成プロセスにおける疑いを入れる余地があるので、遺言無効リスクは高いと言えます。

5 ご自分の状況やご希望に合った方法を

手間や費用をかけず、自分の思ったように遺言を書きたい方は、自筆証書遺言がおすすめです。

ただ、生前の紛失、破棄に備えて、遺言書の保管をしっかりする必要があり、かつ没後の遺言無効を防ぎたいならば、

ア 当時の遺言者(自分)の状況、遺言作成状況などを詳しく記録したりしておく

イ 方式の面倒くささを覚悟し、かつ遺言書を外に出してしまうリスクを覚悟して、法務局に保管してもらう、

などの工夫が必要になると思います。

手間や費用はかかるものの、確実なプロセスで、かつ極力紛失、破棄の可能性なく遺言を遺したい方は、公正証書遺言がおすすめです。

ただ、遺産が高額になる場合は相応の費用が掛かることを織り込んでおくこと、そして、本当に自分が残したい遺言は何なのか、ということを確認しながら、公証人の先生と相談して作成することが重要になると思います。

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